1%(0.01) × 1%(0.01) = 0.0001
一つ目の1%は、日本全体の農家における有機農家の数。
二つ目の1%は、有機農家の中で少量多品目栽培を行っている有機農家の数。
これについては正確な値ではなく、多少前後するかもしれません。
10%としても、0.1%。
あくまで概算ですが、こうして考えてみると、無農薬有機野菜セットを直送でお届けしている有機農家は、日本の農家の全体数において「0.01~0.1%」。
割合としてはかなり少ないですが、セットの中身は案外多様です。
今回の結論は、
- 野菜セットを販売している個人の有機農家は「好き」でやっている
- 栽培については農家自身で大きく異なるポイント
- 栽培をいくら頑張っても「品種」は越えられない
です。
参考になれば幸いです。
非効率かつ複雑なオペレーションの少量多品目栽培
大手宅配サービス会社の仕組み
無農薬有機野菜セットの宅配はほとんどが、企業が複数の農家さんと契約して、各野菜を一度集めてからセットを組み、お客様へお届けするという流れです。
例えば、自動車を製造することを想像してみてください。
自動車を製造するとき、部品点数はおおよそ3万点。その部品ほとんどは、複数の中小企業が製造し、自動車メーカに供給しています。
部品を一つ作るにも、「研究、開発、設計、製造、品質保証」という複数の工程があります。
製造する部品を分担することによって、各中小企業は少数の部品を大量に供給することができるようになります。
自動車メーカ ⇒ 大手宅配サービス会社
中小企業 ⇒ 契約農家
に当てはまります。
有機農家の野菜セットの仕組み
一方で、有機農家直送の野菜セットは、一人で複数の野菜を育て・収穫し・お届けする、という流れです。
先ほどの自動車メーカの話でいえば、数台の車を一人で作り上げるというイメージ。
数万台の車を大量に造る自動車メーカのように大量に作ることはできません。
とても非効率です。
具体的にどのようなことをするのかと言いますと、
野菜を育てるときには、それぞれの旬に、毎週、バランスよく、根菜類、果菜類、葉物類がお届けできるように野菜セットを想像しながら、年間計画作成を作成します。
- 品目・品種選定 → およそ50品目、100品種以上は選定する(例えば、一つの品目としては大根があり、その中で聖護院大根や紅芯大根、おふくろなどの複数の品種があります)
- 施肥設計・ほ場(畑)の回し方検討 → 各野菜に対して肥料をどのように施すか、各野菜に適した畑の選定をする
- 栽培方法・栽培管理検討 → 各野菜にあった野菜の育て方を畑で実践する
ということを事前に綿密に考えたうえで、実際の栽培に移ります。
一品目なら一つの野菜について考えればいいわけですが、野菜セットを作るための少量多品目栽培では、「約50品目ほど育てるので単純に×50」となります。
品種はさらに多くなりますから、さらに2倍、3倍、4倍と増えていきます。
まず、計画を組むだけでもなかなか大変な作業になります。
さらに、野菜を順々に育てるということは、
- 一斉に畝を立てたり
- 一斉に収穫したり
- 一斉に片付けしたり
という、一斉作業ができません。
一つの品目を育てる「○○農家」という言葉がある理由が、なんとなくお分かりいただけると思います。
このように、綿密な計画を立てる必要性があることや生産効率の悪さから、有機農家の方でも実際に行っている方は少ないです。
ではなぜ、非効率だと分かっていながら少量多品目栽培を行っているのかというと、
- 「好きだから」
- 「全過程を網羅したいから」
- 「ワクワクしたいから」
- 「新たな美味しい品種を発見したいから」
ということで、野菜セットを栽培している方が多いのではないかと思います。
有機農家自身の考え方が「野菜セット」には反映される
栽培は有機農家によって大きく異なるポイント
野菜セットには、有機農家自身の考え方が反映されます。
どういうことかというと、
- 栽培理論や栽培方法
- 野菜セットを誰にお届けするのか(飲食店、ホテル、家庭など)
- 野菜セットにどのような野菜を入れるのか(珍しい品種ばかりなのか、味を優先しているのか)
など、全てはそれぞれの有機農家に委ねられています。
特に、栽培方法(栽培理論)は有機農家によって大きく異なるポイントでしょう。
どのような理由で、その栽培方法(栽培理論)を選んでいるのでしょう?
- 美味しさを究めるためなのか
- 有機農家自身のこだわりによって選んだ栽培方法なのか
- 石油や石油製品を使わないような方法を選ぶのか
私個人の意見としては、野菜が本当に必要なのは、「農家の想いではなく、植物生理に合致した生育環境」であると考えています。
野菜が種から芽を出し、葉を大きくする光合成の過程で必要な「水、二酸化炭素、光エネルギ、窒素、リン酸、カリ他、カルシウムやマグネシウムをはじめとするミネラル類」などが、生育の各段階でバランスよく配分され続けられる環境を整えるかどうか。
農家は野菜本人にはなれませんから、野菜の生育過程を科学的に知り、それに合致した環境を整えることしかできない、といっても過言ではないと思っています。
詳しくは、「まずは栽培理論を語れる有機農家か?野菜セットの通販で宅配する前に」をご覧ください。
よく、「こだわり」という生産者の考えを反映した言葉が使われています。
- こだわりの肥料
- こだわりの栽培方法
- こだわりの品種
これは、どちらかというと、野菜目線というより農家目線な気がします。
越えられない品種の壁
「栽培」は野菜にとって、とても大事です。
野菜が健康に育てば栄養価の高いおいしい野菜となって、人にとってもとても大事です。
でも、いくら「栽培」で頑張っても越えられないのが「品種の壁」です。
例えば、
- 白いカブは紅くはならないし
- 青首大根を蒔いても、聖護院大根にはならないし
- オレンジ色の人参は黄色くなりません
小さな種を見比べるだけでは一見わかりませんが、備わった「特性」というものはどんなに人が頑張っても変えられません。
栄養価は高く上げることはできても「特性」は変わらない。
日本の市場には、
- 箱詰めしやすい、運びやすい
- 寒さや病気に強い
- たくさん収穫できる
という観点から同じ品種が多く出回って、まだ見ぬ品種がたくさんあります。
一つの品目にしてもたくさんの品種がありますから、「×50品目」あるとすれば、それを一つずつ選定するのは個々の有機農家。
百人いれば百様の野菜セットになることは想像に難くないと思います。
旬や鮮度以外にも「品種」を楽しむ、というのも野菜セットの一つの特徴です。
まとめ
長々となってしまいましたが、おさらいをすると、
- 野菜セットを販売している個人の有機農家は「好き」でやっている
- 栽培については農家自身で大きく異なるポイント
- 栽培をいくら頑張っても「品種」は越えられない
お客様からすれば実際に届いた野菜セットが重要なわけですが、有機農家もこうしていろいろ考えてやってるんだな~というくらいに捉えていただければと思います。