野菜の「美味しさ」を大きく左右するポイントとしては、
- 旬
- 品種
- 栽培方法
- 鮮度
が挙げられます。
今回は「鮮度」について。
どんなに高品質の野菜を育てたとしても、収穫してからの時間が経過すればするほど、
「美味しさ」が減ってしまいます。
今回は、
- 植物生理から収穫するタイミングを考える(理想)
- 実際の収穫タイミングはどうなってるの?(実際)
という、「理想」と「実際」の二つの観点からお伝え出来ればと思います。
「旬」の時期に合わせて育てることはやはり、理に適っています。
植物生理で考える「収穫するタイミング」
野菜は日中も夜も、生命を維持するために呼吸をして生きています。
それは人と同じで「酸素:O2を吸い、二酸化炭素:CO2を吐く」という行為。
エネルギーを得るために、呼吸によって野菜自身は、
- 栄養分解:野菜自身の蓄えている糖や酸を分解
- 蒸散:呼吸とともに水分が蒸散
を行います。それに伴って、
- 栄養分解では、糖や酸の分解で食味が落ちる
- 蒸散によって、体内の水分量が減り、萎れる
という「品質低下」につながります。
野菜の呼吸は、
- 温度に比例する(温度が高いほど、呼吸量は増える)
- 湿度に反比例する(乾燥しているほど、呼吸量は増える)
- 風があたると呼吸量が増える
ので、それをいかに抑えるかがポイントになります。
また、
野菜は収穫される前までは、土から水分や養分を吸収し「光合成」を行っています。
H2O + CO2 → CH2O + O2
水と二酸化炭素から、光エネルギーを受けて炭水化物と酸素を作る。
ちなみに、炭水化物はトマトで例えると「甘みと酸っぱさ」を作る元。
光合成は「光エネルギー」がないとできませんので、必然的に日中にしか行えません。
夜に行うのは、呼吸。(実際には昼にも行っている)。
野菜自身は日中に葉っぱで光合成を行って養分を作り、
- 夜には養分を果実に蓄えたり
- 呼吸するためのエネルギー
として使います。ということは、
- 果菜類は、朝収穫すると「果実」に栄養が蓄えられている状態
- 葉菜類は、夕方収穫すると「葉」に栄養が蓄えられている状態
次に、「栄養」ではなく「水分」で考えてみます。
- 朝の収穫では光合成をしていないので、夜に根っこから吸った水分が体内に蓄えられています
- 夕方収穫では光合成をするので、根っこからあるいは体内の水分が利用され、朝に比べては水分は少ない
それに加えて、先ほどの条件、「呼吸の特性」である
- 温度に比例する
- 湿度に反比例する
を考慮すると、
- 温度の低いのは「朝」
- 湿度が高いのは「朝」
なので、朝収穫する方が「瑞々しい(水々しい)」。
ということになります。
「栄養」や「瑞々しさ」で考えると、以上のようになります。
「収穫タイミング」の実際。農家直送の場合で考える
収穫タイミングについて農家直送で考えると、実際のところ、「季節に応じて」変わってきます。
野菜が凍る季節(高千穂では11月下旬から3月頃まで)は、収穫するタイミングが夕方になります。
なぜかというと、野菜が凍った状態で収穫すると野菜を傷つけてしまうから。
なので、
- 野菜が凍っている出荷直前の朝ではなく、野菜が解けた収穫前日の夕方に行う
※夕方に収穫したとしても、冷蔵庫のように寒い中で保管できるので鮮度の低下は少ない
ということ。
上記の条件を踏まえれば、この時期にお届けするメインの「葉菜類」にとっては、理に適っています。
また、その他の季節(4月から10月頃まで)は、野菜は凍らないので、
- 果菜類は「養分」、「水分」をしっかりと蓄えた朝に収穫する
この時期にお届けするメインの「果菜類」にとっては、理に適っています。
つまり、
それぞれの季節のメインとなる野菜たちにとって、
「理に適った収穫タイミング」で自然と収穫できている。
旬の野菜を育てることは、
- ヒトの身体が自然に求める野菜であり
- 収穫のタイミングもまた、野菜にとって自然と良い状態で収穫できる
ということです。
まとめ
野菜の植物生理から考えると、
- 果菜類は、朝収穫すると「果実」に栄養が蓄えられている状態
- 葉菜類は、夕方収穫すると「葉」に栄養が蓄えられている状態
- 朝収穫する方が「瑞々しい(水々しい)」けれども、冬は葉菜類は凍ってしまう
という条件があり、
農家直送の収穫タイミングは各野菜の旬(メイン)の時期で、下記のようになります。
- 果菜類は、「栄養と水分」が多い「朝」収穫
- 葉菜類は、野菜が凍っていない「夕方」収穫
四季がそれぞれの野菜の収穫タイミングを教えてくれているし、
旬の野菜を育てることは理に適っているということが、
「鮮度」という観点から垣間見えてきます。
あとは、「鮮度を保持する」ために、
野菜の呼吸の特性である、
- 温度に比例する(温度が高いほど、呼吸量は増える)
- 湿度に反比例する(乾燥しているほど、呼吸量は増える)
- 風があたると呼吸量が増える
をいかに「輸送中」と「ご家庭」で抑えるかがポイントになります。
以上、参考になれば幸いです。