当園がある九州は宮崎県高千穂町、「神話と渓谷の町」として知られています。
ご存知でしたか?
- 「日本神話の聖地」として知られ、スピリチュアルスポットとしても有名
- 大地に深く刻まれた柱状節理の大渓谷として知られる「高千穂峡」
- 里人たちが繰り広げる「夜神楽」
- 世界農業遺産認定されている高千穂郷・椎葉山地域
など、自然と人々が織り成す風景は美しく、年間140万人の観光客が来られます。

軽トラで高千穂町内を走っていると、県外の「わ」ナンバーの車をよく見かけます
一方で、有機栽培や自然栽培における「神話」をご存知ですか?
それは、
- 自然栽培(自然農法)で作られた野菜や果樹は「枯れる」
- 有機栽培で作られた野菜や果樹は「腐る」
というものです。
これはどういうことなのでしょう?
野菜の宅配サービスを検討する上で、
- 自然栽培の野菜がいいのか
- それとも有機栽培の野菜がいいのか
で迷われている方もいらっしゃるのではないかと思います。
学校の「理科」を思い出しながら読み進めてください。
自然栽培も有機栽培も野菜が育つ植物生理は同じ
自然栽培も有機栽培も野菜を育てるという最終的な栽培の目的は同じです。
手段が違って、目的が同じ。
そして、もう一つ同じなのは、野菜の「植物生理」です。
野菜はどのように育っているのか、簡単に化学反応式で書くと
H2O + CO2 → CH2O + O2
これは、理科で習った野菜(植物)の光合成です。
言葉にすると、
- H2O(水)とCO2(二酸化炭素)を
- 太陽光の光エネルギーを使用して
- CH2O(炭水化物)とO2(酸素)を作る
となります。
結果として、O2(酸素)は空気中へ放出しますから、野菜の体内に残るのは、CH2O(炭水化物)です。
そして、CH2O(炭水化物)と土からN(窒素)を吸収して合成することで、野菜の細胞や繊維の元となる「たんぱく質(NとCとHとOで構成される)」を作り、身体を維持します。
植物は繊維と細胞でできていますから、
- 繊維はCH2Oがたくさんつながった状態
- 細胞はたんぱく質
つまり、結果として、有機栽培であれ自然栽培であれ、どちらの栽培方法であったとしても「有機物」となります。
※有機物とは、一般に、C(炭素)を含む化合物を有機物をいう。
C(炭素)以外に有機物を構成する元素として主なものには、水素Hや酸素Oや窒素Nなどがある。
ちなみに無機物とは、有機物以外のすべての物質のこと。
CO2(二酸化炭素)など簡単な炭素化合物と、水(H2O)などのように炭素以外の元素で構成されている化合物。
次は、「腐敗」について。
そもそも植物の腐敗とは、「腐敗細菌、真菌、酵母など微生物によって、生物由来の有機物、特にタンパク質などの窒素を含んだ有機物が分解されること」と定義されています。
つまり、「腐敗菌が付いてしまうと有機物であれば腐ってしまう」ということです。
自然栽培の腐敗実験については、
- 各野菜が栽培される過程で使用された資材の種類、堆肥の状態、施肥量などの条件は?
- その実験の統計的集団特性を知るための母集団の数は?サンプル数は?信頼性は?精度は?誤差は?ばらつきは?
というような「実験結果までのプロセスをどのように踏んでいるのか」が個人的には気になるところです。
自然栽培も有機栽培も同じ方向を向いている
自然栽培も有機栽培も目指している方向は同じはずです。
おそらく
- 環境に良い栽培
- 人に良い栽培
- 安心、安全
という観点で、自然栽培や有機栽培に取り組もうと志した農家の方がおおいはずです。なので、「○○はだめだから△△の方が良い」ということではないと思います。他を否定することで自分を肯定するということは避けたい。
実際のところ、自然栽培や有機栽培はさらに細かく、それぞれの流派のようなものに分かれています。
各々の農家が信じる栽培をすればよく、そのような野菜を買いたい方は買えばよい。他の栽培はここが悪いからダメだということではないのだと思います。
それよりも、野菜の宅配において大切なのは、
- 宅配サービスを受ける料理の作り手や食べ手が、悩んで選択したことに対する責任であって、
お客様を農家が裏切らないようにすること - 野菜セットに満足できる「価格やおいしさ、安心」などを提供すること
だと考えます。
それがなければ元も子もないですからね。
栽培「方法」よりも前に大事なこと
植物が生長する際に必要な栄養素は何でしょうか?
必要なものを列挙すると、
- 窒素
- リン酸
- カリウム
- カルシウム
- マグネシウム
- 鉄
- 銅
- ホウ素
- マンガン
- 亜鉛
- 硫黄
多量、微量など必要量はそれぞれで異なります。これに加えてまだ必要なミネラルはありますが、さまざまな種類のミネラルを、植物は「生理」として必要にしています。

植物からすれば、「プロの畑に植わっているんだ」とか、「家庭菜園の畑に植わっている」ということは関係のないこと
植物が芽を出した瞬間から、その畑に広がる栄養素を吸収し始めます。栄養素がバランスよく広がっていればいいのですが、偏ったり、不足していたり、過剰にあったりすると成長に影響します。
これは考えてみれば当たり前の話なのですが、
- 野菜は畑にないものは吸収できません
- 野菜が生長して土壌中から持ち出した栄養素は、なくなってしまう
また、根っこは呼吸しているので土はフカフカのほうがいいし、水も適度にあったほうがいいなど、これらの必要な条件があって、次にそれをどのように実現させるというのが「方法(手段)」です。
ということで、「方法」よりも前に野菜がどのようなプロセスで育つのかという植物生理を知ることが、結果的に健康的な野菜に育つのだと考えています。
食べ手の方は、有機農家の「栽培方法」を知る前に、その有機農家がどのような考えでその方法を選んでいるのかを知ったほうがいいかもしれません。
まとめ
- 有機栽培であれ自然栽培であれ、有機物であれば腐敗菌が付いてしまうと腐ってしまう
- 有機栽培であれ自然栽培であれ、お届けするお客様への責任を果たすことが大切
- 有機農家がどのような考えでその方法を選んでいるのかをまず知ったほうがいい
「腐敗する」という観点で、野菜の宅配を自然栽培か有機栽培かで迷われている方は、あまり気にされなくてもいいのではないかと思います。
宅配を検討されている方は、
- 安心できる
- 美味しそう、美味しい
といった根源的な部分で判断されてみてはいかがでしょうか?
参考になれば幸いです。