「農薬」を英語で表記すると、次のようになります。
- pesticide
- agricultural chemicals
- plan protection products
これを日本語にすると、
- 殺虫剤
- 農業用化学物質
- 植物防疫溶剤
となります。
農薬として一つのカテゴリにまとめられていますが、
種類としては様々なものがあります。
今回は
- 「農薬の種類」
- 「農薬取締法とその背景」
- 「安全性」
についてお届けします。
参考になれば幸いです。
農薬の種類
農薬の種類は次に示す通りです。
- 殺虫剤191種類(うち化学物質163種類)
:人間や農作物にとって有害な害虫を殺すために使用される薬剤 - 殺菌剤128種類(うち化学物質114種類)
:病原性あるいは有害性を有する微生物を殺すための薬剤 - 除草剤139種類(うち化学物質138種類)
:不要な植物を枯らすために用いられる農薬
(※除草剤は元々、ベトナム戦争の「枯葉剤」として使用されていた) - 植物成長調整剤32種:農作物など有用植物の成長や発育をコントロールして、
品質を高めたり、収量を上げたり、不良条件でも収量を安定させたり、
生産上の労力を省いたりするために用いる薬剤 - 忌避剤1種
- 殺虫剤5種
- 展着剤1種
- その他3種
と、多数あります。
この種類を見ても、薬剤という意味が持つ「治療その他の目的で薬剤を調合したもの」とは、なかなか思えません。
農薬取締法とその背景について
農薬取締法は、第二次世界大戦後のGHQの占領下、農地改革の翌年の1948年に制定された法律です。
目的は、
- 農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保
- 農業生産の安定と国民の健康の保護
- 国民の生活環境の保全に寄与すること
この頃の日本は戦後の食糧難、第一次ベビーブームに伴う食糧増産の社会的な要請があり、
生産性を向上させる農薬の使用は、増加の一途をたどりました。
その後は、経済発展に伴って食糧難は少しずつ解消されましたが、
農業人口の少子高齢化が進行し、農作業の生産を向上させる農薬の使用は減ることはありませんでした。
使用される農薬は、3年ごとの登録更新の際に
- 国際的に使用禁止となったもの
- 残留性や毒性の高いもの
- 害虫に対して効力を失う抵抗性が生じたもの
について、農薬メーカが登録を更新せずに失効することで、
より良いと考えられるものに置き換わってきました。
ただし、失効した農薬の回収は、
- 農薬メーカの努力規定に留まり、ほとんど実行されていないこと
- 農家の納屋で放置されていること
- 引き続き使用されていること
が日常的にありました。
このようなずさんな管理下にあった農薬は、2002年に「改正農薬取締法」へと改正されました。
その背景としては、
- 中国から輸入した冷凍野菜に、毒性の高い失効農薬が検出されたこと
- 国内の生産農家も失効農薬を使用していたこと
- 個人輸入農薬の使用の実態が明らかになったこと
などが発覚し、世論の不満が高まったことが法の改正へと繋がったのです。
主な改正ポイントは、以下の通りです。
- 個人輸入や海外で購入して持ち込むことの禁止
- 農家が特別調合した薬剤を作ることの禁止
改正前は、販売しなければ農薬を「輸入・製造・使用」しても問題とならなかったのです。
そして、農薬を使用するにあたって、あらかじめ決められていることがあります。
- 適用農作物の範囲(例:稲、カメムシ類など)
- 使用時期(例:収穫の7日前まで)
- 使用回数(例:本剤3回)
- 使用量(例:10アール(1000m2)あたり60~50リットル)
- 希釈倍率を守ること(例:4000倍に希釈)
が義務付けられています。
さらに、
- 農業普及員
- 病害虫防除員
- 糖道府県知事が指定する指導員
の指導を受けながら使用することになり、
事実上推奨される農薬以外は使用できないのが現状。
第三者の目が入ることで安全を担保している、という風に変わったんですね。
農家は、努力義務として「農薬の使用時期、回数、量」などの使用履歴を付けることが必要で、
最終有効年月日を過ぎた農薬は使用できなくなっています。
結局は誰を信じるか
今回は、「農薬」に関する種類と導入背景について話を進めてきましたが、
農薬を使用した栽培「慣行栽培」を否定しているわけではありません。
本質は安全性がどのように担保されているか。
「農薬」について知ることで、
- 安全だと思う
- 安全ではないと思う
- なんとなく大丈夫かな
- 何となくいや
といろん
- 自然栽培
- 有機栽培
- 減農薬栽培
のどの野菜を宅配しようか、あるいは宅配しないという「判断」につながれば、
と思い書きました。
要は、食の安全性を誰に任せるのか、
- 自然栽培であれば「自然栽培の各農家やその会社」
- 有機栽培であれば「有機JAS規格」、「各有機農家やその会社」
- 減農薬栽培であれば「基準や法律を定めた国と各農家」
ということだと思います。
まとめ
- このマイクは音の出るマイクです
- このペンは紙に書けるペンです
- この車は走って、止まって、曲がることができます
これらのことは全て当たり前なことですよね?
でも、この当たり前が当たり前でなかったことが「食」にはありました。
そして今も、度々「食品偽装問題」など表面的に浮かんできては消えてを繰り返しています。
今後10年もしないうちに、団塊の世代の農家は引退し、農家の数が一気に減ります。
99%が「農薬」を使用する慣行栽培。有機農家はわずか1%。
それぞれの農家数には開きがあるためおそらく、
「慣行栽培と有機栽培との割合」はあまり変わらない、変わってもわずかだと思いますが、
海外から輸入した野菜が増えてくることは想定できます。
野菜の背景はわかりにくくなりますが、とにかく、安全性なんて気にせずに食べたい、というのが至極当たり前なことです。