日本人は昔から、「見えないもの」を「見よう、信じよう」としてきた民族です。
四季の変化がもたらす豊かな自然から多くの恵みを受け、時には天災にも遭遇しながら生きています。
自然そのものを神のように崇拝するようになり、「八百万の神」、森羅万象に神々が宿るという日本人独自の精神性、世界観を持っています。
- 田んぼの神様
- 山の神様
- トイレの神様(厠神)
など。
そんな「見えないものを見ようとする」日本人が長寿なのは、その独自の世界感や精神性から生まれた「食文化」によるものだと思います。

野菜を育てるときには、土の中のこと、地下で起きていることは見えません。野菜の茎や葉などの地上を見ながら、地下の根っこで起きていることを想像する。
「見えない」ところを「見ようとする」。
日本人の「和食文化」を支える見えないもの
日本人の「食」を支えている調味料には、
- 醤油
- だし
- 味噌
- みりん
- 酒
などの「発酵」調味料が挙げられます。
そもそも「発酵」とは何かというと、
微生物の働きによって物質が変化し、人にとって有益に作用することをいいます。
微生物(菌)が自らの酵素によって、食材のデンプンやタンパク質を分解して、
アミノ酸や糖などの様々な新たな物質を作り出します。
アミノ酸の一種であるグルタミン酸は、「うま味」を代表とする物質。
この「うま味」成分を含む発酵調味料が、料理の美味しさをさらに引き立ててくれているんですね。
ちなみにこの「うま味」というのは日本で発見されました。
- 甘味
- 苦味
- 塩味
- 酸味
に続く基本の味とされ、シェフや食に関心の高い人々を中心に世界中で注目されています。
日本の「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録さましたが、それをのを支えていたのは、
目では「見えない」微生物の働きを「見ようとした」からだと思います。
無形なので形としては「見えない」ですが、世界から注目を浴びるようになったのです。
有機野菜を支える見えないもの
有機栽培で育てる野菜も「見えないもの」で支えられています。
野菜もヒトと同様に「食材」を食べて生長します。
野菜が栄養を吸収するのは根っこで、ヒトでいう内蔵にあたります。
ヒトがお米を炊くことなく口に入れると消化不良を起こすのと同様に、
野菜もまた吸収しやすい形で「食材」を与えてあげなければなりません。
野菜にとっての「食材」は、炭素Cと窒素Nのバランスで決まります。
- 炭素Cはご飯(炭水化物)
- 窒素Nはおかず(タンパク質)
といった感じで、炭素Cと窒素Nの割合をバランス良く取らなくてはいけません。
例えば、
この炭素Cと窒素Nの割合(C/N比)が高すぎた場合、
いわゆる樹の皮やオガクズ(樹のクズ)を畑に直接与えた場合、
野菜は栄養を取るどころか、必要な窒素を土壌中から微生物に奪われてしまいます。
なので、人は野菜が栄養を吸収しやすいように、事前に、発酵させた堆肥などを使用します。
野菜が吸収しやすい「食材」を食べ続けると、
根っこの成長が変わり、そこから吸収される酸素や水分、養分の量が変わり、
地上部の様子が変わってきます。
「目に見えない」野菜の地下部が充実してくると、
「目に見える」野菜の地上部が充実してくる。
目に見えないことのほうがいっぱいある
目に見えないことのほうが実際、暮らしの中ではたくさんありますよね?
- あえて子どもに簡単に教えないようにしていること
- うまく言えないこと、表現できないこと
- 始めて会った方の背景
- 手元にある野菜や机やPCなどのモノの背景
- 社会のできごとやニュース
- 世界中の野菜の種類、品種
- 体内の健康が、体外に現れる
「分からない」「知らない」「見えない」事の方がたくさんあるなと感じます。
その一方で、
今自分の目の前にある「見えるものも」を信じ、「見えないもの」を想像したいとも感じます。
まとめ
- 日本の和食文化は、見えない「微生物の働き」によって支えられている
- 有機野菜は見えない「地下部が充実する」ことによって、地上部は充実する
- 目に見えないものを想像し、目に見えるものを信じる
無農薬有機野菜セットを作るために日々、たくさんの種類の野菜を育てる仕事の段取りを考えていると「目」が回ります。
おあとがよろしいようで。
最後までお読みいただきありがとうございました。