それまでは親でなかった人も、子供が生まれると「親」になります。私も「親」になって、「子育て」が始まりました。
と同時に、有機農家として「野菜育て」もしています。
同じ「育てる」ということで、共通するものがあるなと日々感じています。
- 子育ての主役は「こども」
- 野菜育ての主役は「野菜」
- 親ができることは「成長過程を知り、それに合った環境を整え、必要があれば手助けをする」
例えば、野菜の場合であれば、
- 野菜の植物生理(野菜が生長するメカニズム)を知る
- 植物生理に基づいた野菜にとって合った環境を整える
- 植物をよく観察し、必要があれば手助けをする
育てるということについては、野菜も、果樹も、子供も、新入社員も、自然のものにはすべて通じることかもしれません。
つらつらと書いていきますが、「思ったようにいかないところ」も共通点だなと感じています。
参考になれば幸いです。
有機栽培の本質は、植物生理を基に育てること
野菜の植物生理を知る
有機野菜、有機農業というと、まずは「土作り」からということをよく見耳にします。「良い土があって、良い作物が育つ」というのは、その通りです。
でも、まずは作物がどのように育つのかということを知らなければ、「良い土」とは何かがわからないわけです。
よく「フカフカ」とした土が良いとされます。それがなぜなのか?
それは、
- 葉だけでなく、根っこも呼吸をしているから。
→なので土の中に空気は常に必要。大雨が降って水が土から抜けないと酸欠状態になってしまうので、水を排水できるように隙間がなくてはいけない。 - 根っこから水を吸って光合成をしているから適度な水分を保てるような土の構造になっていなければいけない
など。
植物がどのようなメカニズムで生長していくのか、ということを知っていなければ、どのような「土づくり」をすればいいのかわかりません。

今までの話は「水」と「空気」に関わる光合成の話
光合成は、「水と二酸化炭素から炭水化物と酸素を作る」ということ。
そのプロセスは、
- 光エネルギーをまずは電気エネルギーに変えて、
- その電気エネルギを使って化学エネルギーの分子が作られ、
- その化学エネルギによって炭水化物が作られる
このプロセスを行う葉緑素の中心はミネラル分のマグネシウム(Mg)でできています。

野菜の初期に成長した葉っぱが生育後半で黄色くなってくるのは、マグネシウムが不足しているから
マグネシウムは古くから豆腐を固める凝固剤として知られてきた「にがり」に含まれています。海水から作られたにがりには、海のミネラルが凝縮されていて、調理の際、さまざまな役割を果たして食品のおいしさを引き立てます。
また、マグネシウムこそ、現代人に不足しがちなミネラルだそうです。そのほか、野菜には、
- カルシウム
- マンガン
- 鉄
- 銅
- 亜鉛
- ホウ素
なども必要です。
植物が必要とする三大栄養素
- 窒素
- リン酸
- カリ
だけでは足りていないのです。
各野菜に合った環境を整え、観察し、必要があれば手助けする
野菜の苗を育てているとき、
- 苗が大きくなるにつれて葉の量が増えるから光合成をたくさん行う。
→なので、必要な水の量が増えるので水やりを増やそう - 曇天が続いていると、光エネルギーが少ないから光合成が落ちる。
→なので、水やりを減らそう
といった、水やりひとつとっても「植物生理」をもとに判断します。今までの話は簡単な話ですが、医学に例えると「西洋医学」のようなピンポイントな視点。
一方で、「東洋医学」のような全体を見る視点もあります。野菜全体の生長具合をよく「観察」して診断する方法です。
- 雄しべと雌しべの長さの比較
- 茎の太さ
- 先端付近の葉の巻き具合
など。
野菜の植物生理、発達段階を「知る」ということが基本になって、「育てる」ということにつながっています。
野菜を育てる場合、「理論的なこと」も「感覚的なこと」も知って、うまく使い分けながら栽培することが、最終的な目的の「おいしい」につながります。
特に、無農薬で育てようとするならば、応急処置の薬が使用できませんから、そうならないための対策がとても重要になってきます。
それが「土つくり」と「適切な栄養素の供給」になります。
できることはこどもの「サポート」だけ
まずはこどもの発達段階を知る
子どもの発達段階を知らなくたって、無条件にかわいいのですが、大人が言う子どもの「イヤイヤ期」に差し掛かると、そこで衝突も多くなるといいます。
そんなときに、子どもが
- どういう事ができるようになり
- どんなことに興味を持ち
- どんな行動をしたいのか
という各年齢の発達段階を少し知っていると、「今はこういうことをしたがっているんだな」と
冷静に捉えられるようになると思います。
「知らなくても子どもを愛することができる」のですが、「知ることで子どもをより愛することができる」のだと思うのです。
子どもの性質として、「子どもは本来、生まれつき自分自身を成長させる力を備えている」と、考えた医師が昔いました。医師であるがゆえに、科学的な視点から子どもを観察し、そう考えたそうです。
例えば、0から6歳の子どもには「敏感期」という、特定のものごとに興味を持つ期間があります。
- 言語
- 数
- 秩序
- 感覚
- 運動
- 小さいもの
- 社会性
など。
また、子どもが「こうしたい」と思った自分の意思通りに実現できるようになりたい時期を、「随意筋肉運動の調整期」と呼びます。「自分で」、「一人で」と言い出す1歳を過ぎた頃からどう動けばいいのか、動きの細かなところまで見る感受性が高まってくる。
でも、4歳をピークにその「随意筋肉運動の調整期」は消えてしまうそうです。これらのことは、「子ども特有の発達段階」と言えます。
このようなことを少し知っているだけで、大人からすれば「何をしているのか」と疑問に思う行動も
- 今は「秩序」だった行動を何度も繰り返しているだけなんだ
- 小さなものを「集中」して観察しているんだ
- 行ったり来たり歩く「運動」の練習をしているんだ
と、解釈できるようになってきました。

子どもに合った環境を整える
先の内容をまとめると、
- 子どもの性質として、「子どもは本来、生まれつき自分自身を成長させる力を備えている」
- 0から6歳の子どもには「敏感期」という、特定のものごとに興味を持つ期間があり
- 子どもが「こうしたい」と思った自分の意思通りに実現できるようになりたい時期「随意筋肉運動の調整期」
ということを知ると、「こどもが自分でやりたいと思ったときに自分でできる環境」づくりを親ができるようになります。
- 子どもが自分で着替えられるように、服を手の届く位置に置く
- 子どもが自分で手洗いできるように、踏み台を置く
- 子どもが集中してご飯が食べれるように、テレビを消す
などの具体的な取り組みができます。そうすると、毎回ではないですが、こどもは自分でやろうとします。
「環境」を変えたことによって子供の姿勢が変わってきていることを感じます。親はこどもにはなれませんから、あくまで「主役」はこどもです。
こどものサポート役にまわり観察する
当園の野菜ではまず苗を育て、その後に畑へ引越しするというやり方と、畑に直接種をまいて育てるという二つの方法をとっています。
苗を畑へ引越しした後で、
- 苗自身が困らないよう
- 健康に育つよう
しっかりとした苗を育てるサポート役をしています。
引越し前には、少し厳しい環境をつくり苗を強くするという作業も行います。それで苗の茎は太くなり、逞しくなります。
一方、畑から家に帰れば、苗を育てるサポート役からこどものサポート役に。家族への野菜のお届け役はさることながら、子どもと一緒に遊んだりしています。
野菜と同様に日々子ども接する中で、子どもについて「知識」を少しずつ入れています。そうすることで、子どもがとる行動に対して冷静に捉えることができると思うのです。
そして、実際に、子どもに対して接する時には、
- 「子供が判断して選択する」機会を設ける
- すぐに子どもに教えない
- 集中することの楽しさを知ってもらう
など、子どもの自立を育むように自分自身が行動する。
子供の発達段階を知り、よく観察することで、冷静に対応し行動がとれる。そうすれば、子どもも親にとってもよい連鎖になっていくのではないかと考えています。
まとめ
野菜も子ども、各々がうまく育つためには
- 科学的に分かっている「生長(成長)段階」を知り、それに合った環境を整える
- よく観察して、必要があれば手助けを行う
というアプローチが、野菜も子どもも逞しく、健全に育つと考えています。育てるって奥が深いし、うまくいかないことも多々あります。
でも、まずは、「愛することは知ること」から始めてみます。