有機農家の中においても、
一般的な慣行栽培(農薬を用いた栽培。約99%の農家)においても、
ほとんどの農家さんが「多量に少数の品目」を栽培されています。
畑一面に同じ野菜が植わっているということがほとんど。
ここ九州の高千穂町でもそうです。
- キュウリ畑
- 里芋畑
- 茶畑
など、といったように○○畑という感じですね。
反対に、無農薬有機野菜のセットを通販や宅配で販売する有機農家は、少量多品目栽培を行っています。
少量多品目栽培を行う有機農家は、残りの1%の農家の中でも極めて少数だと思います。
畑の中の畝ごとにそれぞれ野菜の種類が異なることは当たり前です。
○○畑というよりは、畑がパッチワークのようになっていて、
- ナスの隣にはオクラ
- オクラの隣には、ピーマンやトマト
といった具合に、いろんな種類の野菜があちこちに植わっています。
同じ有機栽培とはいえ、その2つの間には、かなり開きがあるように思います。
なぜ、わざわざ「少量多品目栽培」を行うのか?
その理由は、案外単純です。
参考になれば幸いです。
同じ有機栽培でもかなり違う「少量多品目」と「多量少品目」の栽培
先ほど車の違いで例えましたが、どちらに優劣があるという話ではありません。
マニュアルの車でも、自動走行の車でも、「走る、曲がる、止まる」という基本的な機能は同じ。
これは有機栽培における「安全、安心、美味しい」に当てはまるものと思います。
では、決定的に何が違うのかというと、「効率」です。
- 多量小品目栽培の方が効率的
- 少量多品目栽培は非効率
例えば、1つの作物を育てる場合、
- 畑を一気にトラクタで耕耘し、
- 機械を使って一気に肥料をまき、畝を立て、
- 一気に種蒔きをして、苗を育て
- 機械を用いて一気に苗を畝に植えて
- 一気に収穫
何度も「一気に」と書きましたが、つまり、
作業を機械化できるから、効率的に行えるということ。
工場の生産ラインで大量な物を作ることを可能にするのは、機械化ですよね?
これが、一つの畑で複数の野菜を育てる場合どうでしょうか?
- 野菜ごとに必要な面積だけ機械で耕耘し、
- 必要な面積に手作業で肥料をまき、畝を立て、
- 種蒔きは時期によって少しずつ変わり、それぞれ違う品種の苗を育て
- 育った苗は手作業で畝に植えて
- 収穫は色んな品種を少しずつ収穫
といった流れになりまして、機械化というよりも「手作業で少しずつ行う作業」がかなり多いです。
もちろん機械は使いますが、使い方が異なるという具合。
その他、栽培の管理についても同じで、「一気に」行うということはありません。
1日の作業の中では、
- 種を蒔いたり
- 苗の様子を見たり
- 畝を立てたり
- 畑を耕したり
- 草引きをしたり
複雑なオペレーションがあります。
では、なぜ、
こんなに非効率で複雑なオペレーションが必要とされる「少量多品目栽培」行うのでしょうか?
一風変わっているのでしょうか?
根っこにあるのは「楽しい」から
「楽しいから」、「おもしろい」ということより他にはないのだと思います。
- たくさんの種類の野菜が元気に育ってきている様子を見ること
- 「手作業」の感覚が好きだったり
- たくさんの種類の野菜の特徴をそれぞれ知ったり、発見したり
- 例えば、ニンジンといっても色んな品種があって、その中から美味しそうな品種を探したり
- 単純に野菜の株元の草を抜いたり、刈ったり
そういった
- 品種や野菜についての「新たな発見」
- テトリスのように組み立てて行う毎日の「異なる作業」
- 「機械化できない」あるいは、あえて残す「手作業」
があるから。
車の例でいえば、マニュアルの運転操作が必要な車の「操縦する楽しさ」とでもいいますか。
学生の頃には機械しか学んでこなかったので、機械は好きなのですが、機械化できないおもしろさがあるから。
「楽しいから」、「おもしろいから」という、すごく単純な理由です。
野菜は「農家の足音を聞いて育つ」といわれます。この言葉の意味は、農家が野菜の生育状況を頻繁に見れば見る程より良く育つということだと思います。
野菜に向き合って、
- 見て
- 触れて
- 感じる
という作業の根本は、その「ウキウキ感」があるからこそ。
と同時に、畑に植わっている野菜たちは「わが子」のようなものですからね。
それはもう可愛いがってやりたくもなっちゃいます。
まとめ
- 有機栽培とはいえ、「多量少品目」と「少量多品目」の栽培ではかなり異なる
- 少量多品目栽培は「非効率」な作業
- 「少量多品目栽培」を行う理由は、楽しいから、面白いから
「少量多品目栽培」を行う有機農家は、
農業者数からすれば「0.0〇%」という極めて少数の分類に入りますが、その理由は案外単純です。
「楽しいから」、「おもしろいから」。

「おいしいから」、「見た目が美しい色だから」と、料理もそうやって感覚的に食べたいですから、そうやって食べていただけるように「楽しく、おもしろく」育てて、きちっと納期を守ってお届けしたいと思います
スティーブジョブズさんも言っておりました。
「真の芸術家は出荷する」と。
私は有機農家ですので、芸術家ではないですが、
- 畑をパッチワークのようにデザインし、多様な自然を再現しながらも
- 楽しく、面白がりながら作業をし
- そうやって育てた野菜をきちっとお客様にお届けして
- 「美味しい」と感覚的に食べていただく
といったカタチで、「子どものように大人の仕事」を今後もしてまいります。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。