小腸や大腸にはおよそ100兆個もの腸内細菌が生きていることをご存知ですか?
菌といわれて身近にあるものとしては、
- 乳酸菌
- 納豆菌
- 酵母菌
など。
大きさは、1マイクロm~10マイクロm(0.000001m~0.00001m)。
髪の毛の太さは0.001mですから、さらに100から1000倍小さいくらいです。
その菌たちが腸内に生きてくれているおかげで、私たちは栄養を吸収できています。
つまり、菌の働きによって、体調を左右されているといってもいいかもしれません。
微生物は「小さな巨人」です。
これは実は、野菜の健康に関しても言えることなんです。
畑の土の中には1g中におよそ数100億微生物が生きていますから。
ヒトと野菜には共通する点が多く、前回は、
「ミネラルは野菜の健康を支え、ヒトの健康も支える大事な栄養素」
と題して書きましたが、今回は「微生物」について。
有機栽培は「微生物(菌)の力を上手に生かす栽培」といってもいいので、
微生物の役割をとても重視しています。
参考になれば幸いです。
ヒトにとっての微生物「腸内細菌」
大腸がん、大腸炎、肥満、糖尿病、動脈硬化、花粉症、食べ物アレルギーなどの発症は、
腸内フローラ(腸内環境)のバランスの乱れが原因と考えられることもあるほどで、
腸内環境はとても大事です。
腸内環境はよく、「善玉菌、悪玉菌、日和見菌」の3パターンに分けられて、
バランスはそれぞれ「2:1:7」が良いとされてきました。
しかし、科学の進歩によって
- 善玉菌の中にも怠け者がいたり
- 遺伝子レベル
- 代謝物質レベル
といった、細かな部分まで明らかになってきています。
全て善玉菌ならいいのかというとそうではないそうで、
さまざまな菌が生きているという「多様性」が大事だそうです。
多様な菌が生きていることで、環境変化に対応できるということですね。
菌も生きているわけですから、活動するためのエネルギー源が必要となります。
そのエネルギー源となるのは何かというと、ヒトの「食事」です。
ヒトが食べるモノによって、腸内環境のバランスが保たれたり、崩れたりして、
それが結果的に体調不良になるきっかけということで、始まりは「食事」にあります。
有機栽培、有機野菜にとっての微生物・菌
野菜は土の中にある栄養分を取って成長します。
そのため、土には、
- 通気性、排水性、通気性などの物理性
- 土壌中の有機物を分解して、養分や土壌団粒(フカフカの土)を作る、
あるいは土壌病害を抑制する生物性 - 土壌の酸性やアルカリ性などの化学性
の大きく三つの性質が求められます。
それぞれがバランスよく維持されることで、野菜の健康的な生長に寄与します。
野菜が栄養をうまく吸収できるように働くのが「微生物」。
微生物が「フカフカの土」を作ることで生物性のみならず、物理性も整えてくれますからね。
微生物は「有機物を分解する」ことで養分やエネルギーを得て、増殖していきます。
有機物なら何でもいいかといえば、そうではありません。
例えば、
ヒトが生のお米を食べたら消化不良を起こすので、お米を炊いてから食べるのと同様に、
微生物が有機物を食べやすいように水分・温度を調整したものでなくてはなりません。
「発酵させた堆肥」がその例です。

もう云うこともなくなりましたが、お米でいう「はじめチョロチョロ、なかパッパ」です
微生物の食事は、ヒトの食事でいうところの
- お米に当たるのが炭素C
- おかずに当たるのが窒素N
で、両方をバランスよく取ることで活動するためのエネルギーが得られます。
その理由は、微生物の身体自身がたんぱく質を中心とした有機物(CHON)で構成されているので、
その炭素Cと窒素Nのバランスを保ちながら取り込み、増殖するからです。
微生物の種類としては、一例として、
- 糸状菌:コウジカビなどのカビの仲間で、土壌微生物の中で最も多いといわれている
- 放線菌:腐葉土の下など湿り気があって、通気性が良いところに棲みついている
- 納豆菌:あの納豆のネバネバ、そしてうまみ成分を作っている菌
- 酵母菌:パンやビール、ワイン、酒などの食品加工の分野で多用途に利用されている
- 乳酸菌:ヨーグルトやヤクルトなどの乳製品を作る菌
が挙げられます。
こうしてみると、ヒトの食事にも出てくる
- 納豆菌
- 酵母菌
- 乳酸菌
が入っていますね。
野菜にとって有用な微生物は、人にとっても有用な微生物だということがわかります。
まとめ
ヒトにとっても野菜にとっても、良い微生物は共通しています。
ヒトにとって「第二の脳」である腸。
脳と腸は神経系を通じて連携しており、適正な腸内細菌が心の健康によいとされるそうです。
脳がストレスを受けて腸に届いてきても、乱されないような腸内環境を作っておきたいところ。
そうすれば、「ストレスを受けたから暴飲暴食」という悪循環を回避できそうです。
野菜にとって「土の中」が腸にあたります。
大雨や長雨、日照不足などの悪条件によっても大きく乱されることのないような、
良い「環境」を土の中に作っておくことが必要。

さて、苗の環境を整えに行ってきます