ミネラルが野菜の健康を支える?
ヒトにとってはミネラルは大切なものとはわかるけど、野菜にミネラルが必要なの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
以前にこんなコンテンツを作成しました。
・慣行栽培でもなく自然栽培でもなく「有機栽培」で無農薬野菜を育てる理由
このコンテンツでの概要は、
『 H20 + CO2 → CH2O +O2 』
水と二酸化炭素から、太陽の光エネルギーを利用して、光合成によって炭水化物と酸素を作る。
そして、炭水化物を作る過程は、植物自身が炭水化物をエネルギー源にして
1)製造
2)運搬
3)合成
という仕事をしており、結局のところ、この合成された炭水化物が、甘みや酸味などの旨味になります、という内容でした。
その光合成を陰で支えているのが「ミネラル」。そんなミネラルの働きについて、詳しくお届けします。
そもそもミネラルって?
生体にとって欠かせないミネラル
商品としては、
- ミネラルウォーター
- ミネラルサプリ
- ミネラルファンデーション
などが身近にあります。
そもそもミネラルとは何かというと、定義は、「有機物を構成している炭素C、水素H、窒素N、酸素O以外の生体にとって欠かせない元素のこと」。無機質とも呼ばれています。
ミネラルの特徴は、ビタミンと比較すると、
- ビタミンと同様に体の機能の維持・調節に欠くことのできない栄養素
- とても少ない量で重要な働きをするところはビタミンと同じ
- ビタミンと異なることは、ミネラルは体の構成成分にもなっている
などが挙げられます。
続いて、例を挙げながら見ていきましょう。
ヒトにとってのミネラルの働き
ちょっとわかりにくいかもしれませんので、例を挙げてみると、
- ナトリウム_Na
- カリ_K
- カルシウム_Ca
- マグネシウム_Mg
- マンガン_Mn
- 鉄_Fe
- 亜鉛_Zn
- 銅_Cu
などがあり、糖質や脂質、タンパク質、ビタミン、食物繊維に並ぶ六大栄養素のひとつ。
ヒトの身体の中では作ることができないので、食べ物からとる必要があります。
- 骨や歯の形成
- 神経の伝達
- 細胞の働きをスムーズにする
など、身体の臓器や組織を円滑に働かせるために必要な微量要素。ミネラルが不足したり、摂りすぎた場合に、身体の不調が現れます。
微量ではあるもののヒトにとっては「生命活動」を支える重要な役割を担っているミネラル。これが野菜にとっては、どのような利用がされているのか?
次に続きます。
野菜にとってのミネラルの役割
実のところ、野菜にとっても基本的には人と同じ役割。
- 細胞の合成
- 根の発育促進
- 茎の葉の健全な強化
- 病害抵抗力強化
など、作物栽培にとって必要不可欠な肥料養分。野菜自身が作り出すことはできず、土の中にあるミネラルを吸収します。
ミネラルは、
- 不足すると機能障害につながるし
- 多ぎすぎても過剰障害が出てくる
- ミネラル同士の吸収を抑制しあう(拮抗作用)
など、ヒトと同じ働きがあります。
これは、ヒト、野菜といった視点でなくて「生命体」と考えれば当然のことなのかもしれません。ヒトと野菜が似たような生体であることは確かです。
各ミネラルごとの野菜とヒトへの働き
各ミネラルは具体的に、野菜とヒトにどんな働きを助けるのかというと、
- カリ(K)は、
野菜にとっては、水分調製、細胞分裂、細胞肥大など。
ヒトにとっては、細胞内外での物質交換に関係、タンパク合成への関与など。 - カルシウム(Ca)は、
野菜にとっては、植物細胞膜の生成強化、酸の中和など。
ヒトにとっては、骨組織の生成、酵素の活性化、精神安定など。 - マグネシウム(Mg)は、
野菜にとっては、光合成に寄与する葉緑素の中心成分など。
ヒトにとっては、心臓や筋肉の働きを正常に保つなど。
ここにあげた働きは一部分ですし、他のミネラルもさまざまな働きに作用します。
とても複雑な「合成・分解」=「代謝」を体内で行っている、ということがいえますね。
農家の考え方でミネラルは不足する
ミネラル分は昔循環していた
ちなみに、
- 窒素_N
- リン酸_P
- カリ_K
だけを肥料として考えている農家の野菜は、ミネラルが不足しています。ミネラルは生命体の体内では作れませんからね。

ここで大事なのは、「慣行栽培(一般的な栽培)」か「有機栽培」かというカテゴリーではなく、「農家」というカテゴリーでとらえたほうがいいでしょう。
農家が「ミネラルが重視である」ということを知っているかどうかで変わってきますから、栽培方法のカテゴリーで捉えることはあまり意味がありません。
現代の野菜はミネラルが不足していると、言われています。それは、GHQが介入するようになって、窒素、リン酸、カリウムの化学肥料を使うよう命ぜられ、ミネラルが循環しなくなったからです。
昔は人間が排泄する屎尿は「下肥」としてじっくり熟成され、利用されていました。
- 乳酸菌など人間の体内にいて健康維持に働いてくれる菌
- 肥だめに飛び込んでくる好気的な菌
これらが合わさって、十分発酵した菌体肥料として利用されていました。その成分に、人間の体が取り込んだ食べものや塩のミネラルが含まれており、また、土に穴を掘って熟成された下肥には、土のミネラルも含まれていました。
雨でミネラルを流失しやすい日本の耕地へのミネラルの補給・ミネラル循環に一役買っていたのです。
だから昔の野菜の方が、ミネラル分が多かったのでしょう。それを感覚的に捉え、ミネラル分を循環させて供給するということを昔の方々はしていたのです。すごい。
現代では、意図的にミネラル肥料を与えない限り、野菜はミネラル不足に陥ります。それを食べる人もまた不足します。
植物生理に基づいて考えればミネラルは必須
上記にも書いたように、植物生理に基づいて考えれば、必ずミネラルは必要です。それを施肥しているかどうか、というのは農家次第。
栽培を考えるときに、
- 自分の哲学
- 自分のやりたい栽培
といった自分主体の栽培では、これらの話には行きつきません。あくまで、育つのは植物ですから、主語は植物。
- 植物はどんなミネラルが必要か
- 植物はどれくらいのミネラルがどのタイミングで欲しいのか
という考え方をしなくてはなりません。
栽培方法は現場(畑)で実践する方法。その前段階には、植物生理に基づいた施肥設計が必要になります。

車を作るときには「設計」がない始まらないのと一緒です
有機農家に有益なことは、宅配しているお客さんにも有益
ただ、土の中というのは、
- その地域の土の性質があったり
- 畑の中でも場所によって特徴があったり
- たくさんの微生物や菌などが存在する(一グラムの中に数億から数十億といわれています)
ということや、
- そもそも可視化しにくい
- 一定の条件ではない
といった部分があります。
さらに、
- 野菜はたくさんの種類がある
- 必要とする栄養素、吸収の仕方も異なってくる
ため、栽培においてミネラルをどのように施肥するかというのは、難しいところがあるのは至極当然なのです。
ただ、前提として、上述のような考え方があるのとないのとでは、全然違うということですね。
- なぜうまくできたのか
- なぜうまくできなかったのか
を気象条件以外の理由で、農家が考えられるかどうか。
そして、それは農家にとっても有益ですし、つまりは、お届けしているお客さんにとっても有益なことなのです。
まとめ
無農薬で野菜が健康に育ったということは、光合成を行い、ミネラルをうまく吸収しながら生長し、自然界から淘汰されなかったということです。
複雑な「代謝」を行うミネラルを含んだ健康的な野菜を食べることは、複雑な「代謝」を行うヒトの健康にも寄与する。
下記のコンテンツでも書いたことですが、「他の生命の動的平衡を支えていた物質群を過不足なく食べることは、多くの場合、私たちの動的平衡を支える上でも過不足がない」という所以が少しわかるような気がしませんか?
土の中の世界、微生物の世界は複雑で分からないことが多々ありますが、なるべくインプットとアウトプットの関係が分かるように野菜を育てていきたいものです。
最後までご覧いただきありがとうございました。