農法には色々あります。
大別すると、
- 慣行栽培
- 有機栽培
- 炭素循環農法
- 微生物農法
- バイオダイナミック農法
- 自然栽培、自然農法
など、他にも多数。
細かく見ていくと、さらに枝分かれします。
それぞれの農法、栽培を発展させた方々の功績は大きく、農業者にとっては教本として多くの方々が参考にしています。

でも、農業をしていない方にとっては中々分かりにくいはず
専門的ということもありますし、その人の栽培に対する考え方や生き方、人生観というような「哲学」的なものが含まれているからかもしれません。
閑話休題、方法論は人によって変わりますよね?
例えば、早く走る方法を教えるとき、
- もっと手を振って
- もっと足を上げて
- スタートは低く
と、その人の経験に基づいて教える。
一方で、
例えば、人間工学の理論に基づいて、理論的に
- このくらいの角度で足をつくと一番力が出る
- どの距離までにトップスピードを出す
- 下半身と上半身の連動のさせるために体幹を鍛えましょう
といった、理論的な話の方が、上達も早く基礎が身に着くはずです。
当園では慣行栽培でもなく、自然栽培でもなく「無農薬無化学肥料の有機栽培」で育てていますが、それはなぜなのか?
「方法論ではなく理論的に」簡単な例を交えつつ、概要をお伝えできればと思います。
健康に野菜を育てることが目的
野菜がしたいことは炭水化物をたくさん作ること
先に結論をお伝えすると、「安心安全は当たり前、野菜を美味しく健康に育てることが目的だから」という答えになります。
野菜が生長する過程は、化学反応式で簡単に書くと
H2O + CO2 → CH2O + O2
太陽エネルギーを使って、
水(H2O)と二酸化炭素(CO2)から炭水化物(CH2O)と酸素(O2)を作る。
いわゆる「光合成」です。

理科で勉強しましたよね
ここで、美味しい健康な野菜とは、「たくさん光合成して、たくさんの炭水化物を合成する」ということだと考えています。
なぜなら、光合成で作り出された「炭水化物」は、
- 野菜の行っているさまざまな活動エネルギー(炭水化物や養水分の各器官・部位への運搬、呼吸など)
- 野菜の体づくりの材料(炭水化物を使って有機物を合成・蓄積し、細胞や器官を作り上げる)
として活用されます。
つまり、「炭水化物」をたくさん体内に含む植物は、活動するエネルギーをたくさん持ち、体づくりがしっかりなされているということ。
また、「炭水化物」が多いということは、「美味しさ・旨味」も多くなります。
炭水化物が基本となって作られる栄養は、
- 糖類
- ビタミン類
- 酸類
などがあります。
糖度を上げるためにも余剰な炭水化物が必要ですし、例えばトマトでは、この甘みと酸っぱさのバランスが大事になってきます。
続いては、炭水化物をたくさん作るために必要な「ミネラル」について。
植物生理から考えるとミネラルは野菜に必須
とりあえず、野菜に必要なミネラルを列挙します。
よく言われる、窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)以外にも
- カルシウム(Ca)
- マグネシウム(Mg)
- 鉄(Fe)
- マンガン(Mn)
- 銅(Cu)
- 亜鉛(Zn)
- ホウ素(B)
など、が必要なんです。

以外にも多くの種類のミネラルを必要とします
実際、どのような働きをするのかというと、
- カルシウム(Ca)・・・根腐れ・芯腐れ・空洞化防止、茎葉の健全強化など
- マグネシウム(Mg)・・・茎葉の健全強化、病害抵抗力強化など
- 鉄(Fe)・・・根の発育促進、病害抵抗力強化など
- マンガン(Mn)・・・隔年結果防止、病害抵抗力強化など
- 銅(Cu)・・・茎葉の健全強化、根の発育促進など
といった働きをします。
成分によってたくさん必要なもの、微量で良いものなどはそれぞれあります。
ヒトも同じで、ミネラルが不足すると体にとってよくありませんし、かといって、過剰に摂取しすぎても良くないことは一緒ですよね?
このようなミネラル資材を施肥する必要があるということは、有機栽培や慣行栽培に限らず、「経験や方法論」から考え始めてもたどり着けません。
方法論の前にまず、植物生理から考えて何が必要か?という理論的な組み立てが必要です。

野菜の生育は自然条件にとても左右されますが、できるかぎり、植物にとって「育ちやすい環境」を整えてあげなくてはなりません
野菜を美味しく健康に育つためには炭水化物が基本で、それを支えるミネラルもとても重要。
自然栽培も光合成、炭水化物が基本
自然栽培は、「無農薬無肥料」の栽培。
前述した化学反応式
H2O + CO2 → CH2O + O2
太陽エネルギーを使って、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)から炭水化物(CH2O)と酸素(O2)を作る。
当たり前のことを言っていますが、この式だけ見れば、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)があれば野菜は生長できます。(※野菜の生体機能の様々な場面でミネラルなども関わっています)
自然栽培されている方の中で、徹底的に水管理をされている方がいらっしゃって、これも光合成を促進し炭水化物の合成を促すための一つの方法です。
自然栽培で有名な「奇跡のりんごで有名な木村秋則さん」は、木酢液や食酢(酢酸:C2H4O2)を使用されているそうですが、効果として、病害虫防御の他にも炭水化物合成への一助も担っているのではないかと思います。
これはあくまで個人的な意見ですが、自然栽培の野菜は「あっさりさっぱりした味」で、有機栽培の野菜は「甘みや旨味がしっかりある」という感想です。

これは、肥料を施肥しないためにミネラル分が不足し、光合成で作られる炭水化物量が少ないので、炭水化物から作られる「酸味や糖類」の含有量が少ないからではないか、と考えます
ただ、私が食べたのは一部の方の野菜ですし、自然栽培を実践する方の全てがそうであるという話ではありません。
まとめ
農法はたくさんあります。
どの農法が良い悪いということではなく、農法を選ぶのは農家の自由ですし、野菜を購入する方々もご自身が納得した農法と農家を選ぶ。
当園は、安心安全は当たり前なので「無農薬」ですし、それよりも、美味しさを追求するために「有機栽培」を実践しています。
美味しさの決め手は、「旬」、「品種」、「鮮度」、そして「栽培」。

栽培は、「野菜の点数をいかに引き上げることができるか」という最も重要なポイント。
反対に鮮度は、「いかに点数を下げないようにするか」。
品種は宅配ならではの「付加価値」。
旬は、野菜が最もおいしく、カラダも最もおいしく感じられる時期。
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