
有機やオーガニックと聞くと、
- 「体に良い」
- 「環境に優しい」
- 「他のものよりも少し高い」
そんなイメージがあるかと思います。
例えば、
- オーガニックコットン
- オーガニックシャンプー
- オーガニック野菜(有機野菜)
有機野菜はこの頃、スーパーでも見かけるようになりました。
野菜売り場の中の小さな区画に少量が並び、他の一般的な野菜(慣行栽培:農薬を使用して栽培される野菜)よりも少し高価で、野菜の袋には緑色で「JAS」と表示されている野菜。
- 一般的な野菜(慣行栽培:農薬を使用して栽培される野菜)とは?
- 「JAS」マークはどういう意味?
- 有機野菜でも農薬が使用されているってホント?
など、細かな点までご存知でしょうか。
安全な野菜を安心して購入するということは本来、当たり前な話で考えなくともよいことなのですが、考えずにはいられない状況にあることも事実。
参考になれば幸いです。
有機野菜は必ずしも無農薬野菜ではない?
そもそも慣行栽培って?
スーパーに並んでいる野菜の多くは、慣行栽培といわれる方法で栽培されています。
慣行栽培とは、
- 化学合成肥料を使い
- 農薬といわれる化学物質を使い
病害虫の予防と駆除を行いながら栽培する方法です。
日本で一般に行われていますし、世界中でも広く行われている方法です。
有機栽培って?
一方で、「有機栽培」は、このように定義されています。
“有機農産物は、次のいずれかに従い生産することとする。農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力(きのこ類の生産にあっては農林産物に由来する生産力、スプラウト類の生産にあっては種子に由来する生産力を含む。)を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産すること。採取場(自生している農産物を採取する場所をいう。以下同じ。)において、採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取すること。
引用元:有機農産物の日本農林規格[PDF]
平たく言えば、
- 化学的に合成された農薬及び肥料を使用しないこと
- 並びに遺伝子組み換え技術を利用しないこと
を基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した方法。

自然が本来持っている多様な生態系の機能を活かした、自然のしくみに逆らわない農業であり、農産物の生育環境を健全に保つことを重視しながら生産する農業ということです
例えば、農薬で代表的な除草剤を散布すると、
- 草に住み着いている虫
- 草の下の土壌中にいる微生物
たちは死んでいしまいますから、自然界よりもそもそも少ない畑の多様性がさらに失われてしまいます。
畑は元々、人が開墾して、土を耕して野菜が育ちやすい環境を整えてきたものですから、自然界そのものではありません。
ですが、なるべく自然界で起こる現象を再現しようという考えです。
有機栽培のジレンマ「それって農薬なの?」
一方で、有機JAS規格では特定の農薬は一定の条件下で使用して良いことが認められていて、種類は30以上あります。
「一定の条件下」とは、何かというと、
- 農産物に重大な損害が生ずる危険があり
- 農薬の使用以外には効果的な防除ができない場合には
有機農産物の生産をする中でも使うことのできる農薬を定めています。
例えば、
- 除虫菊剤
- 銅や硫黄を成分とした薬剤
- 天敵や微生物などを用いた生物農薬
- 性フェロモン剤
などがこれにあたります。
他にも、特定防除資材(特定農薬)としては、例えばどのようなものがあるか一部を挙げてみると、
- 食酢
- 食塩
- 重曹
このようなものがあります。
とここで、疑問に思うことがありませんか?
- 銅や硫黄は、植物生理の観点から必要な微量要素
- アブラムシを食べるテントウムシが生物農薬
- 食酢、食塩は食べたり、飲んだりしている身近なもの
これらが有機栽培では農薬と分類される。
例えば、食酢は、有機農家が農薬を使わずに栽培できないかと、工夫を凝らし努力してきた技術の蓄積、歴史だったわけですが、殺菌効果があるという理由で農薬に分類されてしまう。
その他にも、蚊取り線香の使用は原則禁止されています。
夏場の作業時に蚊取線香を使用する場合は、通気性の良い状態で窓や入り口付近におくなどして、煙が直接ふれないように有機農産物から離して使用すること。天然の除虫菊から製造され、着色されていない、忌避的効果程度のものにすること。電気式の蚊取線香は、使用すべきではない。

畑の中で使用するときに、野菜に煙が直接触れないようにって、、、
このような事細かい「基準」がなければ客観的な「判断(認証)」ができないこともわかりますが、農薬というカテゴリーに入れなくてもいいように思います。
有機農家も消費者にとっても混乱してしまうような表記です。
有機栽培の認定とジレンマ
農産物に対する安全性や健康志向等に対する消費者の関心の高まりの中「有機」、「減農薬」など表示が氾濫して消費者の適正な商品選択に支障をきたしていたために、平成11年に有機JAS規格が定められました。
有機JAS(Japanese Agricultural standard)マークのついた農産物は、農林水産大臣や認定登録機関が定めた有機JAS規格に適合しているという証です。
「国のお墨付き」ということもあり、安心して購入される方も中にはいらっしゃると思います。
ただ、農家の中にはあえて有機JASの認定を受けない方もいます。
その理由は、
- 申請のための費用
- 申請書類を作る時間
がかかるから。
上記の農薬に関する内容以外にも、
- 畑における栽培管理
- 畑における肥培管理(肥料や苗を育てるための培土のことなど)
- 収穫、輸送、選別などの収穫後の管理
など、各野菜、各圃場に対して、非常に細かい規定があります。
このような申請書を作る手間ひまも農家にとっては、農作業以外での負担となります。
では、有機JAS認定を受けていない農家の方の有機野菜(無農薬野菜)は安全ではなく、安心して宅配できない代物なのか?
と問われれば、そうではないと思います。
- 有機野菜の栽培プロセスの透明性
- 有機農家の人柄、考え方
を知ることができれば、安心して購入することができるのではないでしょうか。
例えば、
- 知り合いの有機農家から購入する無農薬の有機野菜
- 田舎のじいちゃんばあちゃんが送ってくれる無農薬の有機野菜
は、たとえJASマークがなくとも安心できる。
もし近くに有機農家さんがいれば、実際に農地を訪問してみてもいいかもしれません。
慣行栽培と有機栽培の比較
慣行栽培と有機栽培を比較すると、
- 日本における有機農家数は、総農家数の0.5%(平成22年推計値)
- 有機農業の生産面積は、農業全体の0.4%(平成21年推計値)
と、日本では慣行栽培が圧倒的に多いことがわかります。
ちなみに農地面積の割合を世界的に見ると、EUでナンバーワンのオーストリアで14%、ついでスイスが11%。
日本において有機栽培が広がりにくい要因の一つは、「温暖湿潤な気候」です。
ヨーロッパのようなカラカラと乾燥した土地と比べれば、ジメジメとした土地というのはカビや菌が繁殖しやすいですので、病気も出やすくなります。
有機農業の広がりは日本、そして世界的に見てもまだまだ発展途上中です。
まとめ
私の個人的な考えは、
「各野菜、各圃場に関する有機JAS認定のための時間や労力を、高品質な有機野菜を育てる時間に充てたい」
ということです。
その代わりに、当園の情報を開示していく必要があると考えています。
これは私個人の考え方で、やっぱり国が認定している野菜が良い方もいると思います。
ポイントは有機農家と消費者の考え方が一致するかどうか。各々が大切にするポイントは何か?
- 有機JASマークがついてる方がよい
- 有機栽培とはいえ、どういう栽培なのか知った上で購入したい
- この有機農家さんオモシロイ!
など。
有機JASマークの有無に関わらず、問われていることは「透明性」なんだろうと思います。